「まだ痛くない」が一番怖い。衛生士が教える、歯周病の正体

こんにちは!
栗林歯科医院丸の内 歯科衛生士の濱﨑です。
みなさん、歯周病という病気について「歯茎から血が出る病気」だと思っていませんか?
確かにその場合もありますが、歯周病が私たちの口腔に与える影響はそれだけではありません。
今日は歯周病についてカンタンに学んでいきましょう💪
「まだ痛くないから」が一番怖い。静かに、しかし確実に歯を奪う病気の正体

「歯周病」と聞くと、多くの方が「歯ぐきが腫れる病気」というイメージをお持ちではないでしょうか?もちろん、歯ぐきの炎症もサインのひとつです。 しかし、私たち「歯科衛生士」が診療の際、実は一番重要視して見ているのは、歯ぐきの色や形以上に「歯を支えている『骨』の状態」なんです。
少し想像してみてください。どんなに立派な家や看板も、それを支える「土台」がしっかりしていなければ、やがてグラグラと揺れ、最後には倒れてしまいますよね?歯周病もこれと同じです。歯という建物を支えている「骨(土台)」が溶けてなくなってしまう病気なのです。
骨が溶け、歯がグラグラに…?「自然には治らない」という厳しい現実

健康な状態であれば、歯と歯ぐきの間の溝(ポケット)は3mm以内です。しかし、病気が進行すると、この溝は8mm以上の深さになることもあります。 ここで一番怖いのが、「8mmもの深いポケットができて骨が溶けていても、痛みもかゆみもないことがほとんど」だということです。
「痛くないから大丈夫」と思って過ごしている間に、水面下では病気が進行し、気づいた時には重症化している…。これが、歯周病が「サイレントディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれる所以です。
私は歯周病治療の専門家として日々診療していますが、正直にお伝えすると、一度重度に進行してしまった場合、私たちが全力を尽くしても治療の成功率は低くなり、その歯を長く残すことが非常に難しくなってしまいます。だからこそ、「痛くなる前」のチェックが本当に大切なのです。
「1本くらい」が招く代償。歯を失うことで始まる「負の連鎖」

歯を1本失っても、すぐに「食事が美味しくない」「顔が変わった」と自覚される患者様は、実は多くありません。人間の身体には「機能的適応」という能力があり、残った歯で無意識にかばって噛んでしまうため、不便さに「慣れて」しまうからです。 しかし、大きな不自由を感じた時には、すでに多数の歯を失っているケースがほとんどです。
臨床現場で私たちが危惧するのは、重症化してから受診することによる「治療コスト」と「通院時間」の増大です。 失った機能を回復するための補綴(ほてつ)治療、例えばインプラントや保険外の精密な義歯には費用がかかりますし、保険診療であっても、複雑な治療には長期の通院が必要です。 「早期発見であれば数回の治療で済んだはずの時間」が、治療のために奪われていく。これは生活において大きな損失です。
奥歯(臼歯)の喪失が引き金となる「咬合崩壊」のメカニズム

医学的に最も恐ろしいのが、口腔内全体のバランスが崩れる「咬合崩壊(こうごうほうかい)」です。 特に、「臼歯(きゅうし)」と呼ばれる奥歯を多数失ってしまった場合のリスクは甚大です。臼歯には「噛み合わせの高さを維持し、強大な咬合力を支える」という役割があります。
この「奥歯の支え(臼歯部支持)」を失うと、噛む力はすべてキャパシティの小さい「前歯」にかかってきます。 本来、前歯は強い力を受ける構造にはなっていません。その結果、過剰な負担がかかった前歯は、フレアアウト(出っ歯のように開いてくる)したり、動揺して抜け落ちたりと、ドミノ倒しのように次々と失われていきます。
さらに、歯周病で歯肉が下がると、歯の根元の複雑な形態(根面や根分岐部)が露出します。ここは窪みや溝が多く、歯ブラシの毛先が届きにくい場所です。 セルフケアの難易度が格段に上がり、プラーク(細菌)が停滞しやすくなるため、どれだけ頑張って磨いても病気が再発しやすくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
歯も、骨も、一度失えば「二度と元には戻らない」。だからこそ伝えたいこと

擦り傷が自然に治ったり、髪の毛がまた伸びてきたりするように、私たちの体には「再生する力」があります。しかし、残念ながら「歯」と「歯を支える骨」は違います。
むし歯で失った歯質は二度と戻りませんし、歯周病で一度溶けてしまった骨が、自然に元の高さまで盛り上がって戻ることはありません。 失ってしまったら、そこまで。「元通り」ということがない組織だからこそ、私たちはこれほどまでに「予防」や「メインテナンス」の大切さを訴えているのです。
「○ヶ月に1回」は全員ではありません。リスクに合わせた正しい検診頻度

では、全員が頻繁に通わなければならないのでしょうか?実は、そうではありません。リスクが低い方に対して一律に短い間隔で検診を行うことは、過剰な診療になってしまう傾向があります。
適切な頻度は、あなたのお口のリスクによって明確に異なります。
・リスクが低い方:過去に歯周病の経験がなくお口が健康な方は、「6ヶ月〜1年に1回」の検診で十分な場合もあります。 ・リスクが高い方:過去に重度の歯周病まで進行したことがあり、今後も進行のリスクがある方は、「3ヶ月未満の間隔での専門的な管理(歯周病安定期治療:SPT)が医学的に必要です。
このように、私たちは画一的なルールではなく、「今のあなたにとって本当に必要な頻度」を医学的根拠に基づいて判断しています。
まずは「一度足を運ぶこと」からスタートしてみませんか?

「磨けていないと怒られそう…」
そんな不安をお持ちの方も、安心してください。私たちのスタンスは、一方的に厳しい指導をすることではありません。 また、検診の頻度も、まずは一度お口の状態を見せていただき、リスクを確認した上で初めて決まるものです。
ですので、最初から難しいことは考えず、「まずは一度、歯科医院へ足を運んでみる」。 そこからスタートしていただければ十分です。
一度失ったら戻らない大切な体の一部だからこそ、「どうすれば無理なく守れるか」を一緒に考える『二人三脚』のパートナーとして、私たち衛生士を頼っていただければ嬉しいです。
執筆者:濱﨑あゆみ

栗林歯科医院 丸の内院でもご相談を承っております。
論文知識の豊富なドクターや歯周病学会認定衛生士が在籍しております。
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