【衝撃の事実】「歯石」は放置するとどうなる?20年間の追跡調査が教える、歯科検診に行きたくなる話

みなさん、こんにちは!
突然ですが、歯医者さんでの「歯石取り」、好きですか?
「カリカリされて痛いし、面倒だなあ」
「どうせまたつくのに、なんで取らなきゃいけないの?」
そんなふうに思っている方もいるかもしれません。
でも、もし一生歯石を取らず、歯磨きも適当だったら、私たちのお口の中はどうなってしまうのでしょうか?
「歳をとれば、誰でも歯周病になって歯が抜けるのは自然なこと」
そう思っているなら、それは大きな誤解かもしれません。
今回は、歯科界では非常に有名な、ある「伝説的な研究」をご紹介します。これを知れば、きっと明日から歯医者さんの予約を入れたくなるはずです。
◆世界をまたにかけた壮大な実験

1991年に発表されたこの論文は、全く異なる環境で暮らす2つのグループを、なんと15〜20年もの長い期間追いかけ続けた記録です。
比較されたのは、以下の2つのグループです。
- スリランカの茶畑で働く人々
彼らは当時、歯ブラシをする習慣がなく、歯科医院に行くことも一生ありませんでした。つまり、生まれてから一度も歯のケアをしたことがない、お口の中が「完全なる自然状態」の人たちです。 - ノルウェーの都市部に住む男性たち
彼らは子どもの頃から学校で歯科検診を受け、大人になってからも定期的に歯医者に通い、家ではデンタルフロスや歯ブラシを使ってしっかりケアをしている、「デンタルIQが高い」人たちです。
この2つのグループの「歯石のつき方」と「歯周病の進み具合」を20年にわたって比べたのです。
◆ケアをしないとどうなる?(スリランカの例)

まず、全くケアをしなかったスリランカのグループの結果は衝撃的でした。
なんと、14歳という若さですでに歯石がつき始めていました。
そして年齢とともに歯石はどんどん増え続け、40歳になる頃には、ほぼ全ての歯、全ての面が歯石で覆い尽くされていたのです。
さらに恐ろしいのは、その歯石が「歯周病」を急速に悪化させていたこと。
歯石が歯茎の奥深く(縁下)に入り込み、歯を支える骨や組織を破壊していきました。「自然のまま」でいることは、お口の中にとっては「崩壊への道」だったのです。
◆ケアをしているとどうなる?(ノルウェーの例)

一方、しっかりとケアを受けていたノルウェーのグループはどうだったでしょうか。
彼らも人間ですから、多少の汚れはつきます。しかし、40代、50代になっても、歯石がついている場所は非常に限られていました。
最も驚くべき発見は、「歯周病の進行(アタッチメントロス)」の違いです。
ノルウェーのグループでは、多少の歯石が見つかったとしても、それが原因で歯周病が深刻に進行することはほとんどありませんでした。
定期的なクリーニングと毎日のケアによって、悪い細菌が悪さをする前にリセットされていたからです。
つまり、「歳をとったから歯周病になる」のではなく、「ケアをしていないから歯周病になる」ということが証明されたのです。
◆「縁下歯石」という見えない敵

歯医者さんが特に気にするのが、歯茎の中に隠れた「縁下歯石(えんか・しせき)」です。黒くて硬い、厄介なやつです。
この研究で分かったもう一つの重要なことは、「縁下歯石は、歯茎の上の汚れ(縁上歯石・プラーク)から始まる」ということです。
いきなり歯茎の奥に石ができるわけではありません。最初に見える部分の汚れを放置するから、それが呼び水となって奥へと進行していくのです。
スリランカのグループでは、この進行が止まることなく続きました。
しかしノルウェーのグループでは、普段の歯磨きや定期検診で「見える汚れ」を管理していたため、奥深くまで進行するのを防げたのです。
◆タバコと噛みタバコの恐ろしさ

この研究では、喫煙や噛みタバコ(Betel)の習慣がある人についても調査しています。
結果は予想通り、タバコや噛みタバコをする人は、しない人に比べて明らかに歯石の量が多かったです。
特にスリランカの茶畑労働者の間で一般的だった噛みタバコは、歯石形成を強力に促進していました。
生活習慣もまた、お口の健康を左右する大きな要因なんですね。
◆結論:あなたの未来は選べます

この研究が教えてくれるメッセージは希望に満ちています。
「歯石がついたり、歯周病になったりするのは、避けられない運命(自然史)ではない」ということです。
スリランカの人々が経験したような、40代で歯石まみれになり歯を失う未来。
ノルウェーの人々が実証した、50代になっても清潔で健康な歯を保つ未来。
どちらの道を歩むかは、毎日の歯磨きと、数ヶ月に一度の歯科検診にかかっています。
「痛くなってから行く」のではなく、「悪くならないように行く」。
この習慣こそが、20年後、30年後のあなたの笑顔を守る最強の投資なのです。
もし最近、歯医者さんに行っていないな…という方がいたら、ぜひ検診の予約をしてみてください。
「ノルウェーの人たちのように、将来も自分の歯でおいしいものを食べたい!」と言えば、きっと歯医者さんも衛生士さんも全力でサポートしてくれるはずです。
さあ、今日から未来を変えるケアを始めましょう!

著者:大原 裕太
栗林歯科医院 丸の内 院長
「歯科医師が参考にする、歯科医師。」
歯科の論文・予防情報・治療方法に関する発信で歯科関係のフォロワー数は15000人超え
■ 歯科医師/歯科衛生士向け論文知識・治療技術解説の有料オンラインサロン 250人
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